2008年11月27日木曜日

潜入調査!── 中国のちょい“裏”PC市場


北京や上海を訪れた日本人は、ショッピングモールを見て「おや、意外と最先端」と驚く。しかし、この記事を読めば「別な意味」で驚くことになるだろう。

◇ 「3つの財布」で意外と裕福な平均的中国家族
 同じ都市部に住んでいても、大都会生まれ大都会育ちの人々と農村から出稼ぎに来た人で、所得は大きく異なる。ところが、名のある大型家電量販店や 大型スーパーの家電売り場では高級品しか扱っていない。しかし、観光客にはまったく知られていない都会の片隅に、出稼ぎ労働者のための“隠れた”家電市場 や中古PC市場がある。きれいに飾られた大型電器店や大型スーパーと比べて、そうした市場には、当然のように濃厚な生活の臭いが漂い、そして、ディープな のであった。

 大都市ならどこにでもある、大型家電量販店の「国美電器」や「蘇寧」、そして、大型スーパーの「カルフール」や「ウォルマート」に設けられた家電 売場では、ノートPCや大画面液晶テレビが並ぶ。そうした大型店ではブラウン管テレビを探すほうが難しい。扱っている商品の価格は、日本円にして5~10 万円もするが、都市部に住む平均収入の世帯ならなんとか購入できる。
 都市部で生活する世帯の構成は、中国の農村部とかなり異なる。農村部では一戸建て家屋が中心であるが、都市部では集合住宅しか存在しない。都市部に存在する一戸建ては「別荘」という名の超高額郊外物件になる。そういう物件を購入できるのはごく限られた特権階級だ。
 上海や北京など地価の高いところは別として、一般的な都市のマンションは100平方メートルを超える3LDK以上の物件が多い。これは、中国では 1つの住居に3世代以上の大家族で住むことが普通だからだ。退職すれば生活に余裕が持てるほどの公的年金をもらえる高齢の夫婦と、給料は安いが働き盛りの 子ども夫婦が一緒に暮らすわけだが、中国では共稼ぎが一般的なので、子ども夫婦だけでも平均月収の2倍は世帯として稼げることになる。子ども夫婦には子供 が1人いることが多いので、平均的な世帯は5人暮らしということになる。
 世帯全体で見れば、統計における1人あたり平均収入の3倍にも4倍にも達する。このような世帯を中心となって、Netbookには目もくれず2スピンドルのノートPCを物色し、最近では月収以上のデジカメを購入し、結婚記念に大画面液晶テレビを買っている。


◇ 独身貴族とはいかない農村出身者が頼るディープな市場
 しかし、農村から単身で都会に出てきた人々はそういかない。もともと平均を下回る月収であるのに、一人暮らしであるから収入を合算して生活費を捻 出することもできない。そうした人々は、1万円以下の月収で日々の生活をやりくりしているので、大画面液晶テレビやPCを購入するだけの資金を用意するの は困難を極める(そういう事情もあって、PCを買えない若者でネットカフェは繁盛することになる)。
 農村から都会に出てきた単身生活者が「自分の」PCやテレビを購入するのが、そうした人々を対象とした安物家電が集まる家電市場であったり、安い 中古PCが販売されている中古市場であったりする。このような店はどこの都市にも存在する。そうした市場で売られる家電は、中国の農村部ではメジャーな中 国メーカー製であるが、その一方で、農村でも(意外にも)見かけることがないニセモノブランドもある。中国メーカー製家電と偽者ブランド家電の割合はおよ そ半々だ。製品ジャンルもブラウン管テレビ(さすがに白黒テレビはないようだ)やVCDプレーヤー(中国ではVCDプレーヤーは依然として現役なのだ)や DVDプレーヤー、スピーカーにMP3プレーヤーといったAV家電製品から、冷蔵庫やエアコン、洗濯機といった白物家電まで幅広い。
 携帯電話も 2008年の春頃から台頭してきた「山寨機」と呼ばれるノンブランドケータイが人気で、所得の少ない購入層に受け入れられている。

◇ タワー型全盛の中国安物“中古”PC市場
 中古市場では、上記の家電製品に加え、中古PCがデスクトップPCとノートPCを問わず多数売られている。
 中古デスクトップPCはショップブランドのタワーPCだったものが主流で、Willamette(Pentium 4の第1世代)以前、新しくてもPrescott(Pentium 4の第3世代)といったCPUが当たり前のように搭載されている。自作PCが盛んな中国ではパーツをアップグレードしながら長く使うのが普通になってい る。そのため、中古PC市場では取り外された「数世代前のPCパーツ」も大量に流通している。
 一方、ノートPCは、数年前まで「秋葉原に陳列されていました」と思わしき、同じ型番の日本語キーボード搭載ノートPCがよくあったが、最近は英 語キーボードを搭載したノートPCが多くなってきている。どの中古PC市場でも、デルやHP、COMPAQといった外国ブランドが主流だ。

 農村部では、地域の中核となる町でもPCの普及率が低いため、中古PC市場というものが存在しない(中古家電市場もほとんど見かけない)。そのた め、PCを安く買おうとしても、地元のPCショップが販売するショップブランドしか選べない状況にある。そうした意味では、農村部で家電やPCを購入する のは、都市部より選択肢が少なく、価格的ハードルが高いといえる。
 なお、中国メーカーが開発したRISC CPU搭載の安価なPCが複数の会社からリリースされているが、広大な中国の農村に店舗を展開できないためか、企業のWebページかショッピングサイトな どのオンラインで購入するしか方法はなく、農村部の人々には別の意味で手の届かない存在となっている。
 中国でも表だって紹介されない、知る人ぞ知る、そうした庶民密着型の市場。明日の生活にも困りそうな人々が集まってくるところでもあるため、治安 はあまりよろしくなく、明らかに外国人と分かる服装では、規模の大小はあれ事件に巻き込まれる危険性は否定できない。この警告を無視してでも行ってみたい なら、それ相応の覚悟と「オーラ」を出して行くべし。

へぇとかほぅとか言うしかないが、勝手の分からぬ私のごときオジさんが、秋葉の街を探索するのとは、少し事情が異なるようだ。 ただ、最初に指摘された通り、「意外と最先端」への驚きの方が、知らないだけに大きかったように思う。 記事の趣旨として「平均的中国家庭」の定義を明確化する必要性はないのだろうが、少なくとも我が家は平均以下の烙印が押されてしまった....。

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